第6作・純情篇の冒頭、食堂でテレビ番組を見て故郷・柴又を懐かしみ、寅さんが柴又に電話をします。
博「今、どこですか?兄さん」「え?遠いとこ?」
おいちゃん「うそだよ。すぐ近くにいるんだよ」
おばちゃん「そうだよ。駅前あたりじゃないかい?」
博「兄さん、近所にいるんじゃないんですか?」「え?山口県?」
寅さん「これから九州行くところよ」
という電話での会話でした。
さて、寅さんが電話をしたのは山口県ということですが、この駅はどこなのでしょうか…?
これが今回のテーマであり、結論として神奈川県であることが判明し、先日訪問してきたレポートです。そして、前回の記事で書いていたもう1つのロケ地判明というのはこちらのことです。
このテーマについてですが、実はちびとらは数年前から探索を続けてきました。
今回、結論を出すに至ったプロセスは3つありました。
その1つ。ここに1枚の写真があります。
こちらは「男はつらいよ フーテンの寅さん25年の足跡」という本の中に掲載されていたものです。
このシーン、まず写真が古い。つまり初期作品のロケと思われます。しかし、どの作品を見てもこのシーンは出てきません。
しかも夜っぽい。
この段階から、第6作の電話のシーンの時に撮られた写真なのではないか?という可能性を探っていました。
そして、この写真の注目点。
上の切符の料金表です。
社家、厚木 40円
相武台下、下溝、原当麻 80円
このように書かれています。
これらの駅は神奈川県の相模川に沿って走る茅ヶ崎駅から橋本駅を結ぶ相模線の駅です。
そして、寅さんがいる駅は、社家、厚木駅に近く、相武台下駅からは遠くなるということです。
さらに社家の下には30円という駅が存在し、下の文字から何となく門沢橋と書かれているようにも見えます。
相模線の路線図の一部です。
相 厚 社 門 倉 宮 寒
武 ~ ー ー 沢 ー ー ー
台 木 家 橋 見 山 川
下
ということは、寅さんの写真が撮られたのは倉見駅、宮山駅や寒川駅があやしい、ということになります。
ただ、この時点では、第6作があやしいがそのロケだということまでは確定できない、ということでした。あくまでも写真が撮られた駅ということです。
そして、第2の過程は昨年2020年の年明け早々のことです。
ちびとらのサイトをご覧いただいている Hさん という方からメールをいただきました。
書かれていたのは、
昭和40年代に寒川駅を出たところのキオスクの公衆電話
での寅さんの撮影の情報でした。
まさにシーンとしては第6作の電話のシーンそのものですね!
そして寒川駅!
第1の過程と情報が完全に一致。
第6作のシーンは寒川駅に間違いないのではないか、このように考えるようになりました。
そして、最後の過程。
Hさんのメールから1年9ヶ月。
先日の第14作のオープニングで埼玉県ロケがあったことを補強した撮影の高羽さんが使用した台本です。
福島県湯川村の湯川たから館で、第6作の台本をチェックしました!
そして!
そこには見事に、山口県のある駅前というシーンの上に、高羽さんの手書きで 寒川駅 と書かれていたのです!
3つの過程を経て、長年の疑問が完全に解決しました。
さあこれで最後に残るは現地訪問!
訪れたのは、11月上旬のとある日です。
左:2021年11月 ちびとら訪問時 右:「寒川町の70年」より
右の写真はロケから大分経っていますが基本構図は同じで、駅入り口の脇にキオスクがあり、人が立っているあたりで寅さんが電話していたと思われます。
また、下記↓のサイトにはロケ当時のホームの屋根とキオスクの位置関係がはっきりと分かる写真が掲載されています。非常に貴重な写真ですので是非ご覧ください。
My Station Odyssey 2: 寒川駅(相模線)キハ10 (so4338new.blogspot.com)
さて、冒頭にも書いた電話での会話を思い出してみてください。
「兄さん、近所にいるんじゃないんですか?」 → 近所ではないが、山口県ほど遠くはなかった!
「これから九州行くところよ」 → 寅さんは神奈川県から長崎へ行った!
いうことになりました・・・。
山口県で電話のシーンだけを撮るわけにいかず、大船撮影所から近い神奈川県寒川駅での撮影となったのでしょう。
寒川駅訪問時には、駅近くにあるコムロデンキさんでお話を伺いました。寒川駅北口商店会さんにありました。
駅のホームに寅さんのバックに映る屋根があったこと、駅入り口にキオスクがあったことなど記憶されていました。
貴重なお話、ありがとうございました!
そして、情報をメールでお寄せいただいたHさん、ありがとうございました!
それでは今日はこの辺でお開きということで…。
引き続き、ちびとらは旅を続けます。